たまには一般車の修理の話でも

誉自転車ではご近所の一般車修理等も引き受けていますが、よく”もう少し普段から気をかけてあげればこうならなかったのに”と思うような状態で持ち込まれることがよくあります。

上の写真はパンク修理で持ち込まれた自転車でタイヤを外してチューブを取り出したところです。

普通パンク修理ならタイヤのビードを片側だけ外してチューブを取りだしたら修理できるのは大抵の方が知っているはなしでしょうけど、この時は余りにチューブの状態が悪くパンク修理ではなくチューブ交換の必要がありました。

床に散らばっている黒いクズは全部チューブの表面がタイヤ内部で削れた

ゴム片です、消しゴムのクズのような物だと思ってください。

 

床に落ちだ分だけでこれくらいになります。

引き出したチューブの表面にもビッシリこびりついています。

どうしてこんな事になるかと言うと、一言で片づけれます。

「普段から空気を入れていないから」です。

タイヤとホイールのリムってチューブに空気がしっかり入った状態で

初めて密着してしっかり固定されます。

チューブに空気が入っていない状態で自転車に乗り続けるとリムとタイヤが密着してない状態で乗るわけですからブレーキの度、漕ぎ出しの度に

路面とタイヤとの摩擦力>タイヤとリムの固定力

となりリムとタイヤがずれて微妙な量の空転が起きているんです。

そうなると中のチューブはバルブによって1か所固定されているので

表面のタイヤが空転すると表面が削られるのです。

そのクズがこの黒いクズなのです。

 

そして、こうなると連鎖的に全部がダメになっていきます。

タイヤとリムがずれていくと書きましたけど、タイヤ内面とチューブの表面にも摩擦がありますから、そのチューブそのものも削られながらもタイヤに引きずられて引っ張られるのです、でも一か所がバルブでリムに固定されているのですから、

そこでグチャグチャに詰まるのです。

だいたいその状態でパンクします。

路面の何かが刺さるというよりは、自分でチューブ表面を削って裂いたという感じだったり、体重+自転車の重みで圧をかけて穴をあけたイメージです。

※さらに進むとバルブ自体が根元からちぎれます、こうなると完全にOUT

 

そしてこの状態からは、修理の時にも問題が多々あります。

パンク修理の糊はチューブ表面のゴム層を薄く溶かしてパッチを貼って

一体化させて塞ぐわけですが(金属に例えたら溶接みたいなイメージ)

解けるゴムがあらかじめ削られて少なくなっているわけなんですよね。

程度にもよりますが、パッチが貼りにくく、はがれやすくなります。

そして今回みたいな場合、バルブ横が割けているのを塞ぐのって意外と難しいです。

 

更に最後のトドメとして、タイヤの中で時間をかけて引っ張られ続けたチューブは

全長が伸びていることが大抵なんです。

つまり苦労してパンク部分を塞いだところで、今度は長くなり過ぎてタイヤの中に

入らなくなっている場合が多くなります。

 

あとついでに言うなら、チューブだけではなくリムテープも引きちぎれていることが殆どです。

 

バルブ穴の横が細くなっていますから、ほぼ全部そこからちぎれます。

 

さて、今回の自転車の場合、ずっと空気が不足した状態で乗っていた為

タイヤの摩耗も後輪だけすごくて、タイヤ+チューブ+リムテープの交換になりました、費用的には¥5,000弱

 

前輪タイヤの状態から推測するに、普通に空気をマメに入れていれば

後輪タイヤはまだ使える状態だっただろうと思います。

そもそもパンクも起きていないでしょうから、空気さえ入れていれば

すべてなかったことにできたのです。

 

店をやっていて嫌でも気が付くのですが、このタイプのパンクって

同じ人が何回も来ます。商売的に「儲かる」と言えばそうなのかもしれませんけど

修理しながら心に引っかかる事が無くもありません。

 

ぶっちゃけお客さんが自分から金を捨てているような気がしてしまうんです。

だから儲けが減るかもしれんけど言い切ります。

「一般車はタイヤに空気をマメに入れるだけでトラブルの大抵を防げます。」

 

だからパンクが多い人は、少し今までより気にしてみてください。

無駄な出費を抑えることができるかもしれません。

さて、ついでに一つこんな便利アイテムがあるのを紹介して締めます。

”通しスポーク”って言います。

主に一般車の後輪のスポークが折れた時に使用するのですが、

もしその時、普通のスポークしか無かったら後輪を車体から取り外し、

更にスポークの位置やフランジに対する向きによっては、ブレーキ部品やマルチプルフリーホイールだったりが邪魔してそれらを取り外す必要があったりします。

ハッキリ言ってスポーク1本変えることが大仕事です。

 

それが、この通しスポークを使うと、そもそも後輪を車体から外すこともなく

大抵の場合どの位置のスポークが折れても交換できます。

 

入れ方はくの字型に曲がったスポークの頭部分を知恵の輪みたいにくねくねさせて

何とかフランジに通し、元のスポークと同じあやを取ってニップルで固定、テンションを張る、という手順です。

 

実際取り付けるとこんな感じです、案外これで全く問題ないのです。

 

ただ、スポークが折れる自転車で、1本だけでなく2本3本と次々に折れていく場合、

そもそもスポークに粗悪な材料を使っていることが多くあります。

(やたら安い自転車は、こうやって素人が気にしないところを誤魔化して価格を下げています)

こういった自転車を買ってしまったら、もうまともな材質(1本単位で売っている鉄またはステンレス)のスポークで一度組み直すのが一番いいと思います。

(折れるたび全部通しスポークで修理していたら結果的に凄い費用になります)

その際元のスポークの寸法をあてにするのではなく、ハブとリムにあわせて計算し直すと割と違った数字になったりします。

 

 

一般自転車って値段なりの物です、安い自転車には必ず何かあると思ってください。